INTRODUCTION
ドキュメンタリー・タッチで描かれた、リアルな戦争劇映画の傑作

ドキュメンタリー・タッチで描かれた、リアルな戦争劇映画の傑作

1967年、日本を代表する映画雑誌『キネマ旬報』が例年発表する外国映画年間ベスト・テンにおいて『気狂いピエロ』(ジャン=リュック・ゴダール監督)や『欲望』(ミケランジェロ・アントニオーニ監督)といった名立たる傑作をものともせず圧倒的な差で第1位の栄冠を勝ちとった作品があります。1954年から1962年にかけて行われた、フランスの支配に対するアルジェリアの独立戦争を描いた『アルジェの戦い』(1966製作)です。ユダヤ人の家庭に生まれ、第二次世界大戦中レジスタンス運動のリーダーとして活躍した監督のジッロ・ポンテコルヴォは、ネオ・レアリズモの傑作『戦火のかなた』(ロベルト・ロッセリーニ監督)に感銘を受け映画の世界へ足を踏みいれた人物。ジャーナリスト出身の彼は映画を作るにあたって記録映像を一切使わず、目撃者や当事者の証言、残された記録文書をもとにリアルな劇映画として戦争の実体をドキュメンタリー・タッチで詳細に再現しています。

反仏映画として賛否両論を引き起こした衝撃作が、50年を経てよみがえる

"反仏映画"として賛否両論を引き起こした衝撃作が、50年を経てよみがえる

アルジェの旧市街カスバで実際の戦闘に従事し、劇中でFLN幹部ジャファー役を演じたヤセフ・サーディが製作に参加。クエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』で本年度アカデミー賞オリジナル作曲賞を受賞したイタリアが誇るマエストロ、エンニオ・モリコーネ(『荒野の用心棒』『ニュー・シネマ・パラダイス』)が緊張感あふれるスコアを提供し、アルジェリア市民8万人が撮影に協力。マチュー中佐役のジャン・マルタンを除き、主要キャストには実戦経験者を含む素人たちが多数起用されています。戦車、武器類はアルジェリア軍より調達、フランス映画『望郷』の舞台となったカスバでオールロケを敢行、5年の歳月をかけて作られた本作。1966年ベネチア国際映画祭でグランプリにあたる金獅子賞を受賞した折には、当時現地入りしていたフランス代表団が“反仏映画”として反発し、映画監督フランソワ・トリュフォーを除いて全員が会場を退席したという衝撃的なエピソードを残しています。

アルジェリア戦争の真実を描き出した本作が、私たちに訴えかけるメッセージとは?

アルジェリア戦争の真実を描き出した本作が、私たちに訴えかけるメッセージとは?

FLN(アルジェリア民族解放戦線)とフランス軍。相対する当事者たちを分けへだてなく描写し、戦争に巻き込まれていく一般市民たちの日常に加え、ゲリラ作戦の詳細や壮絶な市街戦をクールなモノクロ撮影とジャーナリスティックな視点で冷徹に写しとったこの映画は、現在でも独立戦争の記憶遺産としてアルジェリアでは高い人気を誇り、見るものを戦場の真っ只なかにいる様な気分にさせる鮮烈な表現は時代をこえて輝いています。難民や移民の流出、頻発するテロの恐怖等、激動の世紀に生きる私たちにとって、ポストコロニアルの視点でつらぬかれた本作の歴史的価値は計り知れないものと言えるでしょう。

STORY

冒頭

拷問され仲間の居場所を自白させられた男が、フランス兵たちに囲まれている。フランス軍の制服を着せられた男は、涙を流しながら窓から飛び降りようとするが、兵士たちは仲間のもとに戻るように強制する。 やがて兵士たちは、男を連れ、カスバにあるアジトに乗り込む。壁の向こう側には、アリ・ラ・ポワントが、子供たちと共に身を潜めていた……。

アルジェ、1954年

FLN(アルジェリア民族解放戦線)の声明第1号が流れる。 カスバのヨーロッパ人地区で、無法の賭けトランプをしているアラブ系の青年。警察に追われて走る彼を、フランス人の若者たちが転ばせ、笑い者にする。若者を殴りつけた青年は、民衆に取り囲まれ警察に拘束される。

その青年の名はアマール・アリ、通称アリ・ラ・ポワントだ。 1930年1月15日生まれで就学経験のないアリは、土木作業員やボクサーなどをしたものの、現在は失業中。少年時代から感化院に何度も出入りしていた彼は、そのまま刑務所に収監される。

 

その5ヶ月後

刑務所を脱獄したアリのもとに、FLNの使いである少年が伝令を持ってやってくる。そこには、カスバにあるカフェの主人で警官のスパイであるムハルビのことが書かれており、彼と通じている警官を殺すよう指示が出ていた。 指示通り街中で若い女から拳銃を受け取り、真正面から警官を撃ち殺そうとしたアリだが、拳銃には実弾が入っておらず、あわてて逃げ出す。 拳銃を渡した女に詰めよると、指示を与えたFLN幹部ジャファーの元へ連れて行かれる。アリが警察のスパイかどうかを試したがこれで本物の同志だと証明された、と言うジャファーは、敵と対峙する前に、堕落した連中を排除し味方を整理するべきだと話す。

1956年4月

FLN声明第24号によって、麻薬や酒の販売や消費、売春やその斡旋を厳しく禁じることが宣言される。 アリは市民の間に麻薬を流通させている古い友人ハッサンの処刑を命じられ、それを実行する。

 

1956年6月10日

マフムドとファティファの結婚式。簡素な式だが、FLN党員を始め、大勢のアルジェリア人たちが彼らの結婚を祝っている。

 

1956年6月20日

FLN党員たちが街で兵士を殺害し、また別の場所でも次々に警備隊員たちを襲撃する。襲撃事件の多発化に、警察は街での検問を強化していく。

 

1956年7月20日

またも街中で、FLNによる警官射殺事件が起こる。
夜、8番地で爆破が起き、たくさんのアルジェリア市民たちが犠牲になる。それは、警察署長たちによる報復テロだった。

報復テロに対する民衆の抗議デモが発生。アリはデモ隊の先頭を切っていたが、走ってきた少年から、ジャファーがデモの中止を指示していることを知り、なんとか民衆を押しとどめる。

 

後日、FLNの指示により3人の女たちによる爆破テロが計画される。街ではますます検問が強化されていくが、一般市民を装った女たちはその監視の目をくぐりぬけ、フランス人たちが多く集まるカフェやレストラン、空港に爆弾を仕掛ける。各所で爆弾が破裂し、大勢が犠牲になる。

1957年1月10日

アルジェリアに、フィリップ・マチュー陸軍中佐率いるフランス第10空挺師団がやってくる。 マチュー中佐は、1907年、ボルドー生まれで、ノルマンディー作戦や反ナチのレジスタンス、インドシナ戦争へ参加した軍人。部下たちに、一般市民のなかに身を潜めるテロリストたちへの徹底的な抗戦を宣言。FLN組織の構造を暴くため、アルジェリアのあらゆる市民に対し尋問による捜査を行うよう指示をする。

1957年1月28日

アリジェリア問題が国連総会に上程されたのを機に、FLNによる8日間のゼネストが実施される。

その期間中はあらゆる戦闘が禁じられ、全世界へアピールすることが期待された。一方で、マチュー中佐によるスト破りの計画が進められている。

アリは、FLN幹部ベン・ムヒディを隠れ家に案内する。ふたりは、革命と暴力の関係についてそれぞれの立場で語り合う。「戦争も革命も同じだ。テロが有効なのは最初だけ。勝利を決めるのは民衆の行動だ」と語るムヒディ。

軍によるスト破りが続く中、厳しい拷問を受けた男は、FLNの隠れ家を自白させられる。

 

1957年2月5日

スト最終日。
国連では、アルジェリアの独立賛成の過半数を得られずに終わる。
ますます厳しくなる軍の捜査によって、FLN党員たちも次々に逮捕されていく。FLN幹部たちは、隠れ家の移動と組織の再編について話し合う。話し合いが終わり、変装をしたアリとジャファーは帰路につくが、途中フランス軍に見つかり追い詰められる。知人の家の井戸の中に隠れ、なんとか追っ手をまくふたり。

 

1957年2月25日

大勢の客で賑わう競馬場で大規模な爆破テロが起こる。

1957年3月4日

ベン・ムヒディが逮捕され、報道陣の前で記者会見が行われる。会見で冷静に語るムヒディだが、後日、監房内で自ら命を絶つ。
彼の自死を受け、記者団の間でもフランス軍による凄惨な拷問方法が話題に上り始める。

 

1957年8月26日

サン・ヴァンサン・ド・ポール路地で、FLN幹部のラメルとシ・ムラドがフランス軍によって包囲される。隠れ家に追い詰められたふたりは、爆弾を仕掛け、兵士たち諸共自爆する。

 

1957年9月24日

マチュー中佐たちがジャファーの家を包囲する。必死で抵抗するジャファーだが、家族を人質にとられ、投降する。

次々に仲間を失ったアリは、最後の抵抗として、マフムド、ハシバ、オマールたちと新たなテロ計画を練る。そこに、自白した男を連れたフランス兵たちがやってくる。

壁のなかでじっと身を潜めるアリたち。 マチュー中佐は、そこから出てこなければ家を爆破すると警告する。 次々に家に爆弾が仕掛けられ、カウントダウンが始まる。 大勢の市民たちがその様子をじっと見つめている。みなが見守るなか、猶予時間が過ぎ爆弾は破裂する。

これでアルジェを制圧した、と語るマチュー中佐たち。

 

1960年12月11日

2年間、比較的静かな日々が過ぎたあと、予期せぬ動きがアルジェリア全土に広まっていく。民衆たちの行動が始まったのだ……。

THEATER
エリア 都市名 劇場名 公開日
東北 仙台市 桜井薬局セントラルホール 近日公開
関東 新宿区 K's cinema 2016.10.8(土)
  横浜市 シネマ・ジャック&ベティ 近日公開
  高崎市 シネマテークたかさき 2016.11.26(土)
甲信越静 松本市 松本CINEMAセレクト 近日公開
中部・北陸 名古屋市 名古屋シネマテーク 2016.11.5(土)
関西 大阪市 第七藝術劇場 近日公開
  京都市 京都シネマ 近日公開
  神戸市 神戸アートビレッジセンター 近日公開
  宝塚市 シネ・ピピア 近日公開
中国・四国 岡山市 シネマ・クレール丸の内 近日公開
  山口市 山口情報芸術センター 近日公開
九州・沖縄 福岡市 KBCシネマ 近日公開